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の国からは、神戸に行ってあのお菓子を食べ歩きをしたいというような時代が早く来ればいいなという様な思いもいっぱいいたします。
それから、これからはインターネットというものもたくさん普及してくると思いますので、誰でもどこでも同じような情報というものが持てる時代になってきます。そういうような時に、都市が自分のところがほかとは違うという様な個性を持つためには、おしなべて共有した情報を持っているだけではだめなんです。神戸はおいしい洋菓子をつくっているだけではだめなんです。神戸で学んだ人が日本各地に散らばっているというような現状が今の日本の中でもあります。でも、ただほかの街と神戸が違うところというのは、そういう情報を、お菓子、洋菓子の情報は神戸に行けばトレンディーなものがありますよと言った、今を伝えるようなビビットな情報のある街でなければなりません。それから情報センターとしての基地を持ち得るような職人がいる、デザイナーがいる、それをパッケージをする人がいる、そして語る人がいる、文化として提案していく人がいるというように、洋菓子を取り巻くいろいろなジャンルの人たちがたくさんいる街というようなセンターとしての機能を持ち備えていく必要もあるのです。例えば、情報があるという事と、人が大切というような事を私たちがとても憧れてきましたパリを例に取ってお話をしたいと思います。
パリのファッション界のとても重鎮の方でいらっしゃるのですけれども、「なぜパリが素敵かわかる?」という質問をされました。「なぜですか」と言いますと、「パリは芸術、美術、いろいろなことを学ぼうとしてやってきた有能な人たちを、絶対にパリの街から離さないのよ」とおっしゃるのです。学ぶだけで、学んでパリから帰してしまうのではなくて、来られたそういう人材をきちんと離さずにプールしているというわけです。パリに行かれるとわかると思うのですが、やはり、そんな人たちが世界からやってきてて、美術館だとか専門のところに入らなくても街を歩いているだけで何となくそんな感性を持った、いろいろと刺激をしあうような人と出会える。街の中にも何か情報が満ちあふれているというような事もあるのではないかという思いもいたします。
21世紀というのはコミュニケーションの時代だと言われます。インターネットでコミュニケーションがもっともっと身近に手に入って、いつでもどこでも情報を得ることができるような時代に確かになりますけれども、最も大事な事というのは、その情報を語る人、出す人というのは、人であるということなんです。むしろ、そういう情報を得る時代になった時に、コミュニケーションで最も大事なものは何かというと、人と人が触れ合って、生身の言葉でコミュニケーションしあうといったような仕掛けが大切なのではないかという様な思いがいたします。
ですから、本当に人々が豊かな生活を求めていく時、何が大事かというと、その求められるニーズに合わせて本当の付加価値を提供できるような街の環境、それからシステム、ビジネスがそこにあるか否かというのが、魅力ある街の一つの方法ではないかと思います。
私は神戸を視点にお話をさせていただきましたが、神戸のあるこの県が、兵庫県というところなんですが、実はとても多彩な魅力に満ちあふれたところです。神戸からの情報をする時に、神戸が今までに兵庫県の但馬の方はとか、播州地方はというような情報までを流してきたかどうかというと、非常に疑問に思います。ですから、その魅力ある街というのは、自分のところの周辺の街の魅力をも一つにまとめて、そこから情報を出し、コーディネートできる仕掛けがほしいという思いがいたします。
10月というのは私たちの住むこの神戸のお隣の播州地方というところには、毎日のように秋祭があるのです。その秋祭というのは氏子の単位でやりますが、一基が1億も2億円もするような山車が何基も出ます。見ているだけで文化財が動いているという感じがするのですが、それを支える民衆も、生活文化をも見て頂けるような事というのは、日本人をもが感動するようなシチュエーションがたくさんあるのですが、そんなことを外国の方にもぜひPRしていきたい、もっと神戸がネットワークを組みながら隣接する街の魅力も合わせてアピールしていけるような、そんな街でありたいという様に思っております。

 

○田口
ありがとうございました。観光と、我々は簡単に申しますけれども、観光したい、あるいは都市の魅力という場合に、その中身は一体何なんだという非常に本質に触れるようなお話から始めて頂きまして、ありがとうございました。
人あるいはそのネットワーク、つながりというものの大事さというものもこのシンポジウムの非常に大きいテーマですが、これについて大事な問題提起をして頂いたと思います。
それでは引き続きまして、神戸市から桝井二郎さんにお願いいたします。

 

 

 

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